大失敗のおかげで今がある。プロダンサーへの道のり|ダンス世界チャンピオンDOMINIQUEさん

DOMINIQUEさんインタビュー動画

DOMINIQUEさん

profile

大阪府出身。
高校までは勉強に打ち込むも、高校3年生の秋にダンスに出会い開眼。その後はダンスに打ち込み、大学卒業後一度は就職するも、ダンスの世界チャンピオンを目指しプロの道へ。
身体能力が他の人よりも劣るからと、人一倍ダンスを学んでいる努力家でもある。

DOMINIQUE

兄の影響で始め、世界一のダンサーへ

どのような経緯で進路を決めましたか?

中学校受験のために小学校5年から勉強をしていました。
その時点で大学に行くことは決まっていましたね。
勉強はあまり好きではなかったのですが、将来のためにそういう努力をするのが普通だと思っていたし、勉強を続けることで人間的にも変わるのだろうと思って、勉強をずっとしていました。
理系科目が得意だったので理系の大学に行き、システムエンジニアのような仕事に就きたいと思っていたのですが、高校2年の終わりに勉強のやり過ぎで病んでしまったんですよ。遊びに出ることもなく勉強の毎日だったこともあって精神的に限界で、一般受験ではなく指定校推薦での進学に変更しました。

ダンスとの出会いについて教えてください。

大学が決まった高校3年の秋にダンスに出会って、そこで自分の人生が揺れ動き始めました。
元々『ダンス甲子園』という番組が好きで「すごいな」と思いながら見ていたのですが、まさか自分がダンスをする側になるなんて思っていませんでした。
そんな時、僕の兄が夏休みにネックレスをして、ぶかぶかの服を着て、ラジカセを担いで帰ってきたんですよ。
「何してんのこの人?」と思っていたら、曲を流して駐車場で踊り出して「テレビでやってるやつだ!」と衝撃を受けて。
そこから兄に教えてもらって、真似事みたいに1ヶ月くらい練習したあと、親戚から「お兄ちゃんは上手いのにあんたは変だね」と言われて。そこでスイッチが入って本格的にダンスを始めました。

大学卒業後のキャリアはどのように考えていましたか?

元々プロのダンサーになろうとは思っていませんでした。
ただ、できる限りダンスは続けたかったので、自分で何か起業をするために仕事を持とうという方向に変わっていったんですね。
なので、大学を卒業後は食肉業界に入り、将来は食肉業の独立した店舗を持って、自分で運営していこうと思っていました。

プロダンサーになることを決めたきっかけは何ですか?

ダンスを教えている生徒たちは、中学生の時から「DOMINIQUE先生みたいに世界を取るんだ」と言っている子もたくさんいるのですが、当時の僕はプロダンサーになるなんて全く思っていませんでした。
ただダンスが好きで始めて、職業になるとも思っていなかったので『JAPAN DANCE DELIGHT』という日本で行われる世界大会に22歳で初出場した時に「これを最後にダンスは辞めよう」と思っていたんです。
しかし、その最後の晴れ舞台と思った3分のショーの中で半分ぐらいルーティンが飛んで、頭の中が真っ白になったんですよ。
「今日でダンスを辞めようと思っていたけど、このままダンス辞めたら人生終わる。こんな人生嫌や!」と気づいたらその次の日に会社に辞表を出してました。入社して3年目の頃ですかね。
そこからアルバイトをして稼いだお金をDJの機材やレコードに全部使って、数年かけて『JAPAN DANCE DELIGHT』で優勝することができました。
ルーティンが飛んで大失敗した経験があり、引くに引けなくなった結果、プロになることができましたが、もう一度人生をやり直しても同じ結果を出せるかどうかは正直ちょっとわからないです。
自分の人生はどうなるかわからないですね。

一生の仲間、一生の職業に出会えた大学生活

大学では何を学びましたか?またそれが大人になった今どのように活きていますか?

大学では行動経営学を学びました。
人間のモチベーションを数学的な側面と掛け合わせて、行動した理由を理論化するのが僕の卒論テーマで、その中で論理的に物事を考えることの大切さに気づきました。
努力やモチベーションは様々な要素で作られていることを大学で学び、生徒たちに努力や習慣化することの大切さを話す時も、自然と口から伝えたいことが出てくるので、大学で学んだことが今のレッスンや生徒の育成にすごく活きていると思いますね。

大学に行くこと、大学で部活動をすることにはどんな意義がありますか?

今振り返ると小中高大で、未だに付き合えている友人は大学時代に出会った人なので、大学で一生の職業、一生の仲間に出会えたことは大きな価値だと思います。
大学の時に色んなことにチャレンジして、スポーツやバイト、勉強などでたくさんの人と出会って、その中で様々な苦しみもあると思うのですが、それを乗り越えて一緒に肩を組みながらやってきた友達は歳をとっても繋がっていける仲間だと思うので、大学時代に出会った仲間や出会った知識・経験は一生のものになると思います。

身体能力が低いからこそダンスを『学ぶ』

勉強したことがダンスに繋がった経験はありますか?

数学ができない人間はヒップホップが上手くならないというのが僕の持論です。
今僕の生徒たちには「ダンスが上手くなりたかったら、数学で90点以下取るやつは絶対上手くなれへんから数学だけは絶対取れ」と伝えています。
ダンスは体を動かしながら、頭の中で音楽の切り方、体の使い方、バリエーションの引き出し方というのを考えながら踊らなければならないのですが、その流れが繋がらない人はやはり上手くないんですよ。
上手くなるために考えることは数学的な脳の動きにとても近いので、数学だけは学べと。
実際に数学の点数上がっている生徒はダンスが上手くなっていますね。
それ以外にもダンスの知識(ナレッジ)を理解することによってダンスはより上達します。
例えば音楽が生まれたのは、南部であればジャズが盛んだったからジャズの感じが含まれているとか、ニューヨークはメッセージ性が強いからビートがすごく重いとか、音楽の勉強をしていくと踊る時の楽しみ方も広がり方も勉強した人の方がその分だけ上手くなっていくと思っています。

ダンスが上達するために工夫していたことを教えてください。

バスケやサッカーで特待生になっている人は身体能力が高い人ばかりで、僕はずっとスポーツをやってこなかったこともあり、身体能力が低く、だからこそ頭を使わないと身体能力が高いダンサーに勝てないなと思っていました。
ですので、とにかく研究しようと、コンテストなどでも他の人がパフォーマンスをしている時でも暗い中ずっとノートを取り続けました。
スポーツをやっていない状況でダンスを始めたからこそ、頭を使わないと世界を取れないと思ったので、めちゃくちゃ頭を使いましたね。
その経験があるからこそ、生徒の中にヘタくそな子がいたとしても「俺も一緒やで。こうやったら上手くなるから」と言えるので、そこは良かったと思います。

今後のキャリアについてどのようにお考えですか?

僕は60歳くらいになったら、大学院などに行って学び直そうと思っています。
大学生の頃は8割ダンスの人生で、本当に学ばなければいけなかった時にやってこなかったからこそ、残りの人生の中で学ぶことをやった方がいいのかなと思ったんですよ。
未だに僕は現役で世界中から呼ばれ、海外に行って教えて、ショーをやっているのですが、どう考えても60歳になった時に今と同じように踊れるとは考えていません。
ただ、ヒップホップにはずっと携わっていきたいので、自分の頭の中にある理論を体系化して、ヒップホップの歴史、踊り方、体の使い方、音楽講義など、ダンスを踊る上で大事なことを勉強できる形を作る方法を学びたいです。

これから大学へ進む高校生へ

僕も大学で色んな人と出会い、一生の親友、一生の職業に出会えました。
大学自体はランクも様々だと思うのですが、そこに左右されることなく、自分の将来、その通過点に大学があるのだと考えてみてください。
今の時点では「将来はこうなりたい」という大きな思いを見つけることが最も大事です。
自分の大きな目標を掲げ、その通過点に大学があるのだと捉えると、もう少し楽に大学選びもできると思うし、大学より前に訪れる受験勉強の期間も「大学よりさらに先の夢」を想像しながら楽しく勉強ができると思います。
しっかり頑張ってください。

 

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