努力は実る。大学柔道が人生の変化点となった|帝京科学大学柔道部コーチ大木恭介さん

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大木恭介さん

profile

静岡県出身。
もともとは、大学では趣味程度に続ける程度でいいと考えて入学した帝京科学だったものの、気づけば厳しい練習をやりぬくように。ケガにも見舞われたが、そんな中で鍛えた「心」は今も活きていると話す。
卒業後は警察官を経て、柔道を続ける道を選択。現在は母校の帝京科学で柔道部コーチとして運営にも携わっている。

騙されて進んだ場所で咲いた花

現在のお仕事はどんなことをしていますか?

母校の帝京科学大学で柔道部のコーチをしています。
柔道部の運営が仕事になっていますので、会計的な処理やスカウト、学生の管理・指導など、柔道部に関わることをすべてやらせてもらっています。
大学卒業後は警察官として勤めていたのですが、柔道で日本代表を目指しながら、後輩のために指導していきたいという私の希望が叶い、母校に帰ってきてコーチを始めました。
2022年の夏までは実業団の選手もやらせてもらっていましたが、現在は引退してコーチ業に専念しています。

どのような経緯で進路を決めましたか?

元々本当に弱かったので、大学に行って本格的に柔道ができるような選手ではなかったんですね。
自分に対する期待値は非常に低かったので、柔道をやるのであればあくまでも趣味程度でいいかなと思っていました。
そんな時に高校の監督に「帝京科学大学というところが良いんじゃないか?創立したばかりで先輩がいないから自由にできるし、練習もそんなにやらないからお前に合うと思うぞ」と勧められました。
当時の私は教員になれる大学も視野に入れていたので、帝京科学大学の児童教育学科で教員の勉強もできて、柔道も趣味程度にできる。これはオイシイ話だと思って帝京科学大学を選びました。
ただ、これが高校の監督に騙されたことだったのですが、高校の監督は当時の帝京科学大学の顧問のやり方を知っている人だったんですね。
実際に入学してみると、練習はめちゃくちゃやるし、全然自由なんてない、監督が言っていることとは真逆なことばかりでした。
しかし、真面目に取り組めば、絶対に花を咲かせられる環境だということも監督はわかっていたからこそ、あえて私に帝京科学大学を勧めてくれたみたいで、結果的にコーチとして仕事をするまでこの大学にいるので、当時の高校の監督には感謝しかないですね。

「伝え方」を学んだ大学時代

大学で学んで良かったと思うことは何ですか?

初等教育は国語、理科、算数、社会など色々な科目がありますが、そういった科目関係なく、知らない人に理解を深めてもらうために、どういった手立て、手順で話を進めていくと良いかを考えることは小学校の先生だけではなく、今こうして仕事をしている中でも活かされていますね。
現在、学生募集もやらせてもらっているのですが、そういったところで話す際の手順を考えられるようになったのは、大学で学んだおかげだと思います。
子どもにただ答えだけ教えても理解してもらえないじゃないですか。
その解き方を根の部分で理解させるためには、導入、話の手立てが大事なのだと学ばせてもらいました。

大学時代を振り返って、あの時やっておけば良かったと思い返すことはありますか?

コーチング論や体の構造を知るための解剖学、生理学も学べば良かったと少し思います。
自分は現役の時から感覚派ではなく、頭を使って理論的にやらないと勝てないタイプだったので、独学で各専門の方から意見をいただいて、自分なりの理論を持っているからこそ何とか今やれていますが、もっと専門的に勉強しておけば、理解が深まったのではないかと思います。
例えば誰かがケガをした時も、専門的な知識があるのとないのでは処置の仕方が違ってくると思うので、柔道を指導するための知識をもっと学んでおけば良かったですね。

学業と競技の両立について、普段学生にどう指導していますか?

やはり授業なので「やりたくない」とか色々あると思うんですよ。
そういった時に学生に伝えているのは「どんなことにでも全力で取り組むこと自体が必要だ」ということです。
小学校や中学校で学んだ数学を社会人になったら使うことはないけれども、そういった一つひとつのことに全力で取り組むこと自体に意義があるんだと。
資格や仕事を得るために勉強は必要なことなので、好きか嫌いかという物差しではなく、自分たちが選んだ道なのであればそこは取り組まなければならないことだと思いますね。

大学柔道で鍛えられた「心」

大学スポーツで最も困難だったことは何ですか?

1年生の冬にケガをしたことですね。
その当時、柔道が強い同級生がいて、本当に差を感じていたんですね。
私は高校生にも歯が立たなくて、なんとかしなきゃと思い、柔道スタイルを変えることにしました。
しかし、そのスタイルを変えていく中で全治半年の足首の骨折をしてしまって、手術が必要になると聞かされた時は本当に落ち込みました。
「こんな現状で足踏みしていて大丈夫なのか」と思っていたあの時期が4年間で一番苦しかったですね。

大学スポーツで学んだことはどのような場面で今の生活やお仕事に活きていますか?

心技体の「心」の部分です。
逆境を乗り越える力は柔道の中で培うことができたと思います。
前職の警察の時にも、状況が悪い捜査や警備活動があったのですが、そんな時の「何とかしてこれを乗り越えるんだ、絶対乗り越えられる!」という不屈の精神は柔道で学ぶことができて、今にも繋がっていますね。

努力=自分がなりたい姿に素直になること

高校の部活動と比べて大学運動部はどんな違いがありますか?

大学柔道は「努力する者が報われる世界」だと思っています。
高校だと、成長の段階や柔道的なセンスで勝負が決まってしまうのですが、大学柔道は、どれだけセンスが良かったとしても努力を怠った選手は落ちていくんですね。
反対に、全国大会も一度も経験したことがなかった選手でも、大学4年間努力をして、誰よりも小さなことを積んで積んで積み上げていけば、大きな成果が得られるんだということは私自身体現できましたので、そこが大学と高校の大きな違いだと思っています。

どうすれば努力ができる人間になれますか?

大学は自由な環境なので、やはり甘えが出てしまうと思うんですよね。努力って「努力しよう」と思うとハードルが上がるじゃないですか。
ただ、自分がどうあるべきなのか、どうすべきなのかは絶対みんなわかっていると思うんですよ。
それを素直にやれることが努力だと思っているので、自分のなりたい姿に素直になれるかどうかだと思いますね。
これから大学へ進む高校生へ
大学進学を選ぶ際、迷うことや悩みは色々あると思いますが「自分のやりたいこと」を第一に考えてください。
そうやって考えると、自ずと選択肢は絞れてくると思います。
自分のやりたいもの、こうしたい、こうすべきだって素直に思えるものですね。
やりたいと思うことを取り組んでいる自分の姿を想像して、楽しそうだなと思えることを選択していってください。

 

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