客観力と両立の重要性|アメリカンフットボールで全国制覇|碇武浩さん

碇武浩さんインタビュー動画

碇武浩さん

profile

大阪府出身。
高校からアメリカンフットボールを始め、高校で2回、大学で2回全国制覇。高校3年生から大学卒業まではレギュラー選手として活躍し、大学4年次は関西学生アメリカンフットボールリーグ優秀守備選手。大学卒業後は日本航空株式会社に入社し、パイロットおよびキャビンアテンダントの訓練企画、営業を行った後12年で退職し家業を継ぐ。現在はKEIアドバンスで大学、企業に対して営業を行っている。

本場の試合を観て魅了されたアメフト

大学に進学してスポーツを続けようと思った理由はなんですか?

小学校の時には、日本拳法、水泳、少年野球、サッカーと、放課後は一週間スポーツの習い事で埋まり、友達と遊ぶ暇は無いような生活でした。中学では日本拳法の道場に通いながら、バレーボール部にも入っていて、毎日へとへとになって帰ってくる生活でした。そんな中、中2の夏休みにフロリダへホームステイに行った時、ホストファミリーがアメリカンフットボールの試合に連れて行ってくれました。
それまでアメリカンフットボールを知らなかったのですが、スタジアムに入った瞬間に衝撃を受けました。日本人の太もものような腕、頭の幅よりもよりも太い首が目に飛び込んできて、そして、ものすごいスピードで大きな体がぶつかり合う時の「ガシッ」という大きな音を聞いたときに、「俺がこの先、このスポーツをやらない理由があったら誰か教えてくれ」と思うくらい魅了されてしまったんです。
日本に帰ってきて、当時アメリカンフットボールが高校も大学も強かった関西学院の高等部に入ると決めて受験勉強をし、入学後すぐにアメリカンフットボール部に入部届を出して、気がつけば大学卒業まで一直線。フットボール漬けになりました。父は当初高校からアメリカンフットボールをやることに反対でしたが、日本拳法の道場に通うことを条件に入部を許してくれました。ただ、日本一のチームの練習は自分の想像をはるかに超えるものでした。結局高校一年生の一学期終了まで何とかアメリカンフットボールと日本拳法を両立しましたが、一学期の終わりに日本拳法をやめることの許可を得ることができました。

両立することの重要さを知った新卒時代

大学時代に勉強して良かったと思うことは何ですか?

文章をきちんと書けるようになったことと、英語を学べたことがよかったです。
アメリカンフットボールはアメリカのスポーツですので、プレーヤーではなく、スタッフなどのアメフトに関わるような仕事をする時にも英語で会話することはあるだろうなと考えると、将来生きていく上で英語は必要だろうと何となく思っていました。学生時代はあまりきちんと勉強していなかったのですが、そこだけは意識できていました。

大学時代を振り返って、あの時やっておけば良かったと思い返すことはありますか?

私は新卒で日本航空株式会社に入って約12年間働いたのですが、航空会社では浴びせかけられるように英語だらけなんです。書類もマニュアルも全て英語。「日本語でも理解できないんじゃないか」と思いました。でも、それを理解できないと仕事が進みません。「もっと英語ができたらな」と痛感しました。

航空会社には英語ができる人がたくさんいます。私も入社した時は「いや、俺はアメフトを頑張ってきて、別のところにいっぱい時間を使ってきた」という言い訳をしたのですが、1年も経つとそういう考えは全くなくなりました。やはり勉強でもスポーツでもやってきた人の勝ちで、そんな言い訳は一切通じません。

ですので、英語と論理的な文章を書ける力だけは、大学時代にもっと学んでおけば良かったなと思いました。

デュアルキャリア(学業と競技の両立)を実現するために大切だと思うことはなんですか?

スキマ時間を使うことです。
クラブ活動をしていたとしても、10分、20分くらいのスキマ時間はたくさんあるんですよね。その時にスマホで動画を見るのか、自分がやりたいと思っている英語の本を開くか。この「やる人」と「やらない人」との時間差はものすごい数字になります。
ですから、細切れの時間を使って勉強すること。できたら家に帰ってちょっとだけでも勉強してから寝るというようにルーティンの中に入れてしまえば、無理なくできるようになると思います。

立場が人をつくる。大学で学んだ客観で見る力

大学スポーツで困難だったこと、それをどう乗り越えたか教えてください。

高校の時はレギュラーを取ることに必死で、自分のことだけを考えていればよかったのですが、大学ではチームのために何が必要かを考えるようになりました。
例えば1、2年生の時は先輩に負けないように体を大きくしたり、アメフトのことを覚えたりということに時間を取られていたのですが、3、4年になってくるとチームのことを考えるようになり、「監督やコーチがどうしてあんなことを言うんだろう」とか、「何で後輩たちがこんな不満を言うんだろう」とか、だんだんわかってくるようになります。そうなると、「自分は何が強くて何が弱いのか」、「自分というキャラクターに周りはどんなことを期待しているのか」をだんだん客観的に見られるようになってきて、「チームのためにどうすべきか」、最終的には「自分のために何をするか」がわかるようになり、客観的に見た上で自分の行動を決めていくようになります。
これが後々就職活動や社会に出てからものすごく役立っているなと思います。

高校の部活動と比べて大学運動部はどんな違いがありますか?

高校の部活動は大人に管理されています。
授業も部活動も、決まった時間で決められたことをやっていく。そこには自分の裁量の余地がほとんどない、ある意味窮屈なんです。
しかし大学に行くと、授業は自分で選択して決めるなど、自分の裁量が一気に増えます。さらに、大学スポーツは高校と比べて競技レベルが高くなります。
クラブの練習だけではレギュラーになることは難しいですし、他の大学に勝つこともできない。ましてや、日本一になることなんて、大学の練習だけでは不可能に等しいです。
勉強もやりながらクラブ活動もやり、自分で時間を見つけてトレーニングに時間を使っていく。これをやり切るとなると、高校の時より裁量のある分、逆に辛いんです。
ですので「自分でやっていかなきゃいけない」ということが決定的に違うと思います。

大学に行くこと、大学で部活動をすることにはどんな意義がありますか?

大学やクラブ活動で出会う友人は社会人になってから出会う友人とは質が違います。
同じ釜の飯を食った仲間。これはいくらお金を出しても買えないもので、彼らがいたからこそ、自分を高められるし、自分もおそらく彼らに何らかの影響を与えていたと思います。そんな仲間を作れることが大学に行く意義だと思います。

長い人生のたった4年間ですから、もし可能であれば大学に行って勉強をやりきる。スポーツをやろうと思っているのであれば4年間自分のやりたいスポーツをやりきる。この4年間がその後の80年ぐらいの人生にものすごく良い影響を与えるので、大学に行けるのであればぜひ行った方が良いと思います。

これから大学へ進む高校生へ

一番の親孝行というのは、誰かを幸せにするとかそういうことではなくて、あなた自身が幸せになることです。
そのためには、努力と苦労をしなければいけないのだと思いますですので、たったの4年間ですから、大学へ進学してスポーツと勉強を徹底的にやってみたらどうでしょうか。
本当に親というのは、子供が勉強でもスポーツでも何か真剣に取り組んでいる姿を見ているだけで、幸せに生きていける生き物なんです。私も親になってみて、それがよくわかりました。
これからも頑張ってください。

 

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