教員志望から研究職へ|スポーツ科学研究者の中村有希さん!研究者の挑戦と役割

中村有希さんインタビュー動画

中村有希さん

profile

熊本県出身。
中学では陸上、高校からハンドボールをはじめ、県大会ベスト8。
実技を利用した入試にて鹿児島大学教育学部(保健体育)へ進学。
大学ハンドボール部では九州で3位、西日本大会へ出場。
その後、東京学芸大学大学院にて保健体育教育を学び、
現在は九州共立大学講師として保健体育教育を指導している。

中村

実技で大学に入って、研究の面白さに気づいた

どのような経緯で進路を決めましたか?

私の高校は進学校だったのですが、周りが懸命に受験勉強をしている姿を見て「周りが行くから私も大学受験をする」という選択の仕方をしてしまいました。
そんな状態だったので、何かやりたいことがあるかというとそういうわけでもなく、進路はどうしようかと考えてる時に、部活動の監督から「お前は大学でもスポーツをやったほうが良いんじゃないか?」という助言を受けて、実技で受けられる教育学部の保健体育を選びました。
ただ、私は大学に入って本当に良かったと思っています。
高校まででは出会えなかったような友人や学問の面白さを教えてくれた先生など、4年間の様々な出会いの中で人生の幅が広がりました。

大学院にはどういった経緯で進もうと思いましたか?

研究の面白さに気づいて、もっと学びを深めたいと思ったからです。
大学ではハンドボール部に所属していたのですが、指導者の先生がゼミの先生でもあって、その先生と話していく中で「研究の面白さ」に気づきました。
3年生から始まったゼミ活動で調査をしたり、問題を考えたりする機会が増え、受け身な座学とは違って、研究をする方が格段に楽しかったんです。
そんな研究分野をさらに学びたいと思い、大学院に進むことを決めました。

大学の卒業論文はどのような内容について取り組まれましたか?

私のゼミの先生は衛生学の先生でしたが、幅広い範囲で研究をされている先生で、私は「体育授業の怪我について」をテーマに卒業論文を書きました。
『災害共済給付』という学校で起こった事故や怪我のデータをどういう理由や原因でケガが起きているのかきちんと整理して、分析した内容をまとめました。

先生になるか、研究者になるか

研究者になることを決めたきっかけは何ですか?

大学のゼミ活動での研究が楽しかったことがきっかけになっています。
文献を読んだり、調査したりと研究を続ける中で、生徒に授業をすることよりも研究をしている方が楽しいことに気づいたんです。
そこで、わざわざ自分は教壇に立たなくても、普段現場で活躍されている先生方の抱える悩みを受けて、理論や悩みの解決法を先生方に還元できる立場になった方が面白いのではないかと考え、研究職を選びました。

先生になることも考えていましたか?

元々は先生になることも視野に入れていて、大学3年生の頃に小学校、4年生の頃に中学校の教育実習に行きました。
小学校の子供たちは何でも喜んで、積極的に授業に参加してくれたのですが、中学校の生徒たちは授業をしても反応が薄かったんですね。
その時に小学校の教育実習が上手くいったのは、小学生の無邪気さに救われている部分がたくさんあったからだと気づきました。
中学生への授業を通して、誤魔化しが効かないことを痛感し、きちんと授業の作り方や展開の仕方などを勉強しないといけないなと。
「このまま先生になってはいけない」と強く思いました。

とにかく厳しかった高校時代、
とにかく自主性が求められた大学時代

高校の部活動と比べて大学運動部はどんな違いがありますか?

高校までは指導者の先生がとても厳しく、練習メニューも細かく決められていたため、自主的に自分で何かを考えることはほとんどありませんでした。
一方で大学の部活動は真逆で、かなり自主性が求められるようになりました。
指導者の先生は週1回くらいしか来ないことが当たり前で、自分たちで練習メニューも考えるし、練習場所の手配もするし、大会の申し込みや選手登録、遠征の手続きも全部自分たちでやらないといけなかったので、何かと大変だった思い出があります。
そういうところが大きな違いですかね。
自分で考えて動かなければならないのが大学で、高校はやらされるというか、あまり考えたり選択することがないイメージです。

どんな力が大学スポーツで活躍していく上で必要だと思いますか?

現状を分析して自主的に行動する力が必要だと思います。
今の自分はどれぐらいのスキルか、どんな練習が必要かなど、自分を客観的に分析し、評価できる力がないと、自分の現在地を知ることができません。
スポーツ選手として活躍していくためにも、ただプレーをするだけではなく、分析や管理といったマネジメント能力も持っておかないと、自立した競技者になれないのではないかと思います。

大学でスポーツをすることにはどんな意義がありますか?

自分自身を律する力を磨くことができる点です。
体育会は各部活動で目標に向かってチームも結束していて、約束事も定められているので、自分自身を律することができました。
大学生活で遊びたいという気持ちもあったのですが、一生懸命に目標を持って部活動をやったことで、社会人になるための準備をする期間になったと思っています。

大学スポーツで学んだことはどのような場面で今の生活やお仕事に活きていますか?

自分自身が関わっている仕事に直結している部分もありますし、大学スポーツを通して自己管理ができるようになりました。
大会やスポーツイベントに参加するためには、交通宿泊費がどのくらいかかって、どのくらいの資金を準備しないといけなくて、アルバイトをどれぐらいの計画で立てて、など日常に落とし込んで生活する能力が大学生のうちに身についたと思います。
仕事に関しては、仲間と一緒にチーム運営をしていくことで、仲間と1つの目標に対して進めていく時に「今自分がどのように立ち振る舞うと良いか」を考える癖はスポーツをする中で身につきました。
役割を認識して動くことができるようになりましたね。

後悔していること

大学時代を振り返って、あの時やっておけば良かったと思い返すことはありますか?

日頃から学び直したいと考えています。
自分が大学生に授業をする中でも知識が足りないなと実感することが多々あって、できることなら1〜2年休職してでも学び直したいです。
今になって、大学生、それよりさらに前の高校生の頃からスポーツだけでなく、将来についてもっと考えておけばよかったなと思います。
私が就職や進路について真面目に考え始めたのは大学3年生になってからだったので、もっと早いうちに先々のことを考えながら部活動をしていれば、選択肢を広げられたのではないかと。
本来であれば勉強と部活動を両立することが望ましいですし、私も両立しなければならないと日々考えていたのですが、具体的に行動しなかったんですよね。
部活動をしてる時は部活動のことしか考えられなくて、なかなか将来に目を向けることができなかったので、もう少し大学1、2年生の時から考える時間があれば違ったのかなと思います。

デュアルキャリア(学問と競技の両立)を果たす上でどんなことが重要になると考えますか?

大人に頼るのはすごく大切なことだと思います。
私もスポーツだけではなく勉強もきちんと両立しなければならないと日々考えていたのにも関わらず、動けずにいました。
今になってあの頃を振り返ると、両立しなければいけないとわかっているのに動けなかった理由は、「何をすればいいのかわからなかった」からだと思います。
学問と競技の両立、つまりデュアルキャリアを積んでいくために何を準備して、どんな情報を探せばいいのかが全くわかりませんでした。
私自身の後悔から考えても、周りの大人に頼った方がいいと思います。それこそ部活動の指導者だったり、進路指導の先生だったり、保護者だったり、人生の少し先を歩んでいる先人たちからアドバイスをもらえば、自分がどう動くといいのかがわかってくるのではないでしょうか。
何をすればいいかわからない状態が1番の問題だと思うので、周りに助けを求めて、自分の中だけで止めないで情報を収集することが大事だと思います。

これから大学へ進む高校生へ

高校生の今は自分のやっているスポーツが全てだと思いますし、高校スポーツは人生で1度しかない貴重な経験なので、一生懸命頑張っていただきたいです。
ただ、心の片隅にでも置いていていただきたいのは「あなたの可能性はスポーツだけではない」ということ。
私もスポーツをしていた時「自分にはスポーツしかない!」という意識で活動し続けた結果、引退した時に「何もなくなってしまった」という喪失感がありました。
ただ、実際全然そんなことはなくて、スポーツ以外にもいろんな可能性を進路先で見つけることができました。
ですので「あなたの可能性はスポーツだけではない」ということを心の片隅にでも置いてもらって、できれば高校の時からスポーツ以外のこと、授業でも趣味でも友人関係でも、何でもいいので、スポーツ以外の関わりを持ちながら、高校スポーツに励んでもらえるといいのかなと思います。

 

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