山下航輝さんインタビュー動画
profile
滋賀県出身。
高校からヨットをはじめ、海に関わる仕事をしたいと思うようになり、東京海洋大学に進学。
大学でもヨットを続け、4年生で全国大会出場を果たす。
大学在学中は船の推進力に関する研究を行い、
現在もメーカーにてボートの設計・開発に携わっている。
世界中の海を見たいと志した航海士
どのような経緯で進路を決めましたか?
高校時代から部活動でヨットに乗っていたこともあり、将来は海や船に関わるような仕事ができたらいいなと思っていました。
大学選びの際、自分が本当に将来やりたい仕事、なりたい自分は何だろうと改めて考えた時に「生きている間に世界中の海を見てみたい」というところにいきつきました。そこで航海士を目指せる大学を探し始め、研究の内容や研究室が充実しているところに魅力を感じて、東京海洋大学への進学を決めました。
高校と違い、大学では未知の現象を発見して研究していくため、自ら課題を発見する力と課題を解決する力が身につけられたと思っています。
大学時代を振り返って、あの時やっておけば良かったと思い返すことはありますか?
英語ですね。
私はボートの設計をしているのですが、ボート市場は海外に多いため、海外メーカーの情報を仕入れる時には絶対に語学力が必要になってきます。
また、海外で仕事をするチャンスが私の会社にはあるのですが、そのチャンスを掴むためにも、学生の時からもう少し外国の方と英語でコミュニケーションを取るなどの経験を積み重ねておけば良かったなと今さらながら思いますね。
研究室には留学生の方もいたので、私の方から積極的に話しかけ、コミュニケーションを取れていれば、英語への苦手意識も無くなっていたのではないかと少し後悔しています。
社会に出てからも活きたヨット部の経験
大学スポーツで困難に感じたことはなんですか?
大学でもヨット部に入ったのですが、大学の授業がある期間は土日だけ練習し、長期休みは週5日合宿所で過ごすというサイクルで、基本的に朝の8時半から夕方の16時までしっかり練習をしていました。
部員が20名以上いたのですが、狭い合宿所で生活するため、少しばかりぶつかり合いが起きてしまうんですよ。意見の食い違いであったりとか、生活スタイルの違いだったりとか、そういう意見のぶつかり合いが起きた時に、受け流さずにその場で話し合って、自分たちの力で解決するようにしていました。
また、1年生から4年生まで一緒に活動をしていると、どうしても後輩が先輩に気を遣ってしまう状況になりかねないので、なるべくフランクな環境を作って、不満なことがないかを聞いたり、相談に乗ったり、上級生から下級生に話しかけるように意識していました。
大学スポーツで学んだことはどのような場面で今の生活やお仕事に活きていますか?
ヨットというスポーツは自然が相手なので、急に天候が悪くなったり、海上で部品が壊れてしまって自力で帰ることができないという場面が多々あったんですよ。もしハーバーに帰れないということになると、そのまま外洋に流されて、最悪の場合死に直結してしまう。そういった危険な面もあるスポーツなので、急な天候の悪化だったり、部品が故障してしまった時に冷静になって、瞬時に判断して行動する力。そういうものが練習していく中で身につきました。この力は社会人になってからも活きていて、初めて行うことだったり、イレギュラーなことが頻発した時でも、平常心で取り組めるようになりました。
2つ目は「意見をとりまとめる力」です。
共同生活という経験が学生生活の中でも特に印象強く残っていて、会社でも大人数で活動していると、意見のぶつかり合いが起こることがあるのですが、そのぶつかり合いを悪とはせず「活動方針を決定づける成長のチャンス」と捉えることができる前向きさも合宿生活を通して身につきました。
大学スポーツをすることにはどんな意義がありますか?
「大学運動部の4年間は社会人の入社から定年までの数十年をぎゅっと凝縮した予行練習のようなものだ」とボート部のOBの方に入部当初に教えられました。
入部してから先輩たちのもとで下積みして、2、3年目になると後輩の育成をしつつ自分のスキルアップをしていかなきゃいけない立場になり、4年生になると全体を見渡してチームを引っ張っていく責任ある行動を取らなければいけません。
大学スポーツでは、自分の競技スキルを向上して、全国大会で成績を残すことも大切だとは思うのですが、数字だけでは語ることができない「組織で活躍していく力」や「これからの世界を生き抜いていく力」を身につけることも大学スポーツの意義だと思います。
環境を整えることが両立のカギ
デュアルキャリア(学業と競技の両立)を実現するために意識していたことはなんですか?
明確なルールは自分で作っていなかったのですが、部活動1本にならないようにすることは意識していましたね。学業がある前提で、スポーツのスキルを磨いていくようにしようと思っていたので、合宿期間中は部活動の方に時間を割き、それ以外の時間はなるべく学業に費やすようにしていました。
競技と学業の意識を切り替えるコツはありますか?
大学が都内にあり、合宿所が江ノ島の近くにあったので、距離的に切り替えられる時間があったおかげで「よし、切り替えよう」というような明確なアクションを自分の中で起こすことなく、勝手に競技と学業の意識を切り替えられていたと思います。
それ以外に気をつけていたことは「環境を整える」ということですね。自分のやりたいことと、部活動の環境を分けたかったので、ヨット用品やヨットに関するものは自宅になるべく置かず合宿所に置いて、自宅には学業に必要な教本などを見えるような形で置くようにしていました。
これから大学へ進む高校生へ
「できること」より「やりたいこと」を優先して、自分の進路を選択してみてください。
私も大学の進学や会社選びの基準として「好きなものをとことん追求しよう」ということを1番に考えていました。
学業でもスポーツでも、あなたが見つけたやりたいことをとことん追求できる場所が大学だと思いますので、ぜひ後悔のないように進路選択、大学進学をしてください。